第7章 7月【星降る夜、君とふたりぼっち】スラムダンク/三井寿
9月某日
行きつけの居酒屋にて
「リマ、堀田!ごめん遅くなって!」
「遅いよノト!三井とイチャついてきたのかと思った」
「違う違う、仕事!」
「みっちゃんは?」
「トラブルで、急な残業みたい」
「はぁ、夫婦ともどもルーズ!」
「ごめん、1杯おごるから」
先にテーブルに着いていたのは、高校の同級生である黒木リマと堀田徳男。
黒木はノトと幼稚園から仲が良く、ノトが湘北高校に進学を決めた「原因」とも言える親友であった。
黒木は身なりや学力、職で人を値踏みなど決してしない人。
いつでもファッショナブルで、自分らしさを保ちつつどこか流行を先取りしている。
現在は映像関係の事務所に勤務しているが、将来はフリーのクリエイターとして独立することを夢見ている。
堀田はスラムダンクのファンであればお馴染みである、三井の元・不良仲間である。
バスケの試合では三井のために応援旗を掲げエールを送る、仲間思いの熱い男だ。
高校を卒業すると同時に彼も不良を卒業し、今では妻と子が2人いる。
土木作業員として働く彼は、最近家族のために難しい資格も取ったそうだ。
根はお嬢様であり清楚な雰囲気を漂わせるノトと、アーバンな雰囲気の黒木。真っ黒に焼けた肌にヒゲを生やし和柄のTシャツを着た堀田。
一見様はこの3人の関係を探るため奇妙な目で見つめているが、店のマスターにとってはとうに見慣れた光景だった。
今日は近況報告という名目で、飲みたがりの堀田が皆を招集したのだった。
「そういやぁ、みっちゃんちとノトちゃんちは顔合わせしたのか?」
「……うん」
それは暑い暑い、夏真っ盛りの7月の終わりの出来事。
古いしきたりにはこだわらぬ両家は結納は行わず、食事会を開いた。
そこで決まったことは、挙式は1年後の7月だということ。