第6章 6月【てるてるぼうずを作ろう】ワンピース/ルフィ
メインストリートを抜けた2人は小高い丘のふもとへ辿り着く。
ここを登りきった場所に、幸せを鳴らす鐘が小さく見えている。そこが目指すゴールだ。
一歩足を踏み出したルフィの目の端に美しく優しい青の輝きを放つ花が映った。
このあたりの島ではよく見かける逞しい雑草花たち。
緑に鮮やかな色を差すように、ふもと一面にこの花が広がっていた。
「そーいや、ハナヨメって、花を頭に被ってるよな」
ルフィはしゃがみこみ、その花をリズム良く手の中に積んでいく。
大きな手に握れるだけ積み終えると、あぐらを掻き花を繋ぎ始めた。
しかし手先は不器用なのか、ひとつ繋いだと思えばスタートした端の方からなぜかポロポロと花が崩れていく。
「あーーむっかしいなーーー!」
上手くいかない怒りに悶え、積んだ花をバラまきそうになるルフィの大きな手に柔らかな手が重なる。
ルフィの隣にしゃがみ、最初から最後までその様子を見ていたノトは笑いが止まらず、堪え、下を向いて肩を震わせていた。
「笑うな」
ごめんと謝ろうとしたとき、ノトの口から我慢していた笑い声が吹き出し言葉が続かない。
「おい笑うなって!」
「あははは、ごめん。私、昔から笑い上戸で。ごめんね、でも、頑張ってるルフィさんが可愛くって。最近で、1番笑ったかも」
ノトは目尻に涙を浮かべながら、ルフィが摘み取った花を受け取った。
微笑みながら器用に花を紡いでいくノト。
ときどき、こんなにも可憐な花と格闘していたルフィの姿を思い出し、肩を震わせ笑っている。
あっというまに花は繋がれ、早くも大きな冠に仕上がりそうだ。
ルフィはふてくされながらも、その様子を黙って見ていた。
器用に動く指は細くしなやかで美しい。
手元を見つめ、下を向く睫毛は笑う度に揺れている。
「はい、できた」
青い花の冠とともに飛び切りの笑顔を見せたノトに、ルフィの胸がドクンと小さく音を立てた。
「…すげーな、これ」
ルフィは冠を受け取ると、再びノトの手を引き歩き出した。
今度こそ、あの鐘の下へ。