第6章 6月【てるてるぼうずを作ろう】ワンピース/ルフィ
肉が旨い店はどこにあるのか。
まず目印は看板だ。
そこが美味しいかどうかは、直感というセンサーに頼るしかない。
満たされぬ腹が限界のルフィはただ上を見て走った。
宝石の看板、マリンスポーツの看板、ビールの看板、どれもこれも違う。
夢中で走るルフィの目に飛び込んだ1枚の看板。
それは照りを放ち、ジューシーな肉汁を垂らす、骨付き肉のイラスト。
「ここだぁーー!」
シャボン玉が決して馴染まぬ血相の男を皆が避ける中、誰かの「危ない」という声が響いた。
同時に小さな悲鳴があがり、ルフィの目の前で細身の女性が前方に飛んでいく。
ルフィはしまったと目を見開き、大丈夫かと倒れる彼女の肩を叩いた。
「大丈夫です…私がぼんやりしていたので。すみません」
ルフィは怪我はないかと慌てた。
幸いにも彼女の体はわずかに掌を擦り剥いただけのようだ。
しかしルフィは顔を青くする。
無理に微笑む彼女の瞳が、悲しみに満ちていたから。
それはまさか、自分がぶつかって転ばせたせいではないか。
「俺はルフィ。お前、名前は?」
「ノトです。本当に、お気になさらず」
「嫌だよ。肉おごってやる。だからそんな顔すんな」