第5章 5月【ゴールデンウィーク】黒子のバスケ/木吉鉄平
パソコンに向かい始めてどのくらい時間が経ったのだろう。
隣にぽんと置かれたのは、青い缶コーヒーと個装されたビスケット。
集中していたノトは急に現れた差し入れに肩をびくりとさせるが、甘いものだと認識したとたんに目が輝く。
「わぁ、ありがとうございます!」
「俺の仕事、落ち着いたから手伝うよ」
「…大丈夫ですよ。チームは他にいるんで」
「誰と組んでるだっけ?」
「……隣の、センパイ」
同じチームを組まされたセンパイは、上司の評価は分からないけれど、同僚から見れば責任感が軽薄な人。
要するに、今ノトは1人でこの仕事を成し遂げる覚悟で臨んでいる。
「アイツか…大変だろ?俺に出来ることがあれば、手伝うよ」
木吉さんは、マイペースに見えるけどよく人を見ているなぁと常々に思う。
同じチームで仕事が出来たら、どんなに過酷でも、きっと乗り越えられるのに。
にっこりと笑うその顔につい甘えたくなってしまう。
私もいつかこんな人になりたいと思った。
これはきっと、尊敬って感情。
ノトの隣のデスクに移り資料収集を手伝う木吉。
仕事をこなしている人は経験値が豊富だから、必要な資料の集め方もカンがよく働き、その手早さにも見惚れてしまう。
作業に一つ区切りがつき、ふぅと息を吐き体を伸ばそうとしたとき。
「…ノト」
下の名前で呼ばれた。
不意打ちに、どきりとした。