第3章 3月【第二ボタンは誰のもの】黒子のバスケ/青峰&???
ノトは手を引かれたまま歩く。足の長い彼についていくには、早歩きの努力が必要だ。
「何?どうしたの?」
「いいから、来いよ」
ノトの胸は高鳴っていた。
大好きな青峰大輝に、手を引かれている。
ノトが連れてこられたのは体育館の裏。
生暖かい春の風には、生き物たちが芽吹こうとする土のような独特の匂いが漂っていた。桜はもうすぐ、咲こうとしている。
「…はっ、ついここに来ちまった」
青峰は制服のポケットに手を詰めながら、体育館を眺めている。
バスケ部のエースであった彼にとって、ここはまさに青春の舞台だったのだろう。
「ノト」
名前を呼ばれ、その青い目に見つめられる。
それだけで頭は真っ白に弾け飛びそうだ。
でも彼とこんな風に向かい合うのも、言葉を交わすのも、卒業してしまえば今日が最後になる可能性だってゼロじゃない。
そう思えば淡い恋心がはち切れそうになるのを堪えて、その瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「俺…」