第6章 誰為、己為
顔を赤くしてない方…緋苅くんとやらが、デートか、なんてからかう。
霄ちゃんはそれを、顔を赤くして否定する。
…そんな顔赤くしてると、期待してまうやん?
霄ちゃんは完全に、からかいだと思い込んでるみたいやけど、俺から見たら、ほんまに藤村ってやつは霄ちゃんのことが好きや。
歳もひとつしか変わらんらしい。
…まだ、20歳にもなってない霄ちゃん。
これくらいの歳の子たちなら、そら、同い年くらいと付き合ったがええねん。
でも、
霄ちゃんがもし、この藤村ってやつと付き合うたらと思うと、
俺の中に、醜い感情が湧く。
霄ちゃんの隣は、俺だけで…
視線を感じ、そちらを向くと、藤村が俺を睨んでいた。
まるで、「なんで」とでも言っているような。
ほやから、俺もつい、「お前には渡さん」っていう意味を込めて睨み返しといた。
「えぇ?!すばるさん、いいですって!!」
すばるさんと、楽しく、今日妙子さんに話してもらった、すばるさんの小さい頃の話やらなんやらで盛り上がった。
そして今、会計。
「霄ちゃん、うっさいで。黙ってなさい」
「だっ…!黙ってなさいって!!黙れないですよ!」
実は、すばるさんが会計をひとりで払おうとしているのだ。
つまり、奢ろうとしている。
「わたし迷惑かけましたし!奢られる理由がないです」
払おうとするすばるさんの腕を掴み、精一杯揺する。
「やめろやw筑前煮、めっさ作ってもらったお礼や。それならええやろ?」
すばるさんが苦笑する。
「それならええやろって…!」
「可愛い女の子は黙って男に払わせとけ」
パッとお金を藤村くんに渡す。
「じゃあ余計問題ですよ!!わたし可愛い女の子に当てはまらないですもん!!あっ!ちょ、待ってよ藤村くん!」
お金待って!
「…浪花先輩は、可愛い、ですよ」
?!
なんでここで顔真っ赤にして真顔になるの!
「藤村くんまでそんなこと言う!皆さん、お目目開いてますかっ」
「…霄ちゃん。店員がそないに騒いでええんか」
「ぐっ…!」
確かにバイト着じゃないとはいえ、うるさかったかも…!
ぐぬぅ…と押し黙る。