第8章 あなたと
「すばるさんがわたしを寝かせといてくれた時、」
霄ちゃんがゆっくりと話す。
その声がとても心地いい。
「わたし、夢を見ていたんです。」
「夢?」
はい、と優しく微笑む。
「すばるさんが、私の名前を呼んで、優しく抱きしめてくれる夢です。
高校の時の先生が言ってたんですけど、異性が夢に出てきたら、その人が自分のことを想い慕ってくれているらしいんです。」
普通ならそんなん、思い込み激しいやつやろって思うやろう。
でも、今は。
今なら。
「ほな、それ、正しいかも知らんなぁ」
「霄ちゃん、」
名前を呼んでまた抱きしめる。
今日だけで何回抱きしめるんやってくらい。
「ほんまに、好きや」
腕の中で、霄ちゃんの体が一瞬強張る。
けど、
そっと、俺の背中に手を回す。
「、わたしもです、すばるさん。
ずっと、ずぅっと前から…」
言わなくても伝わることだってある。
けど、
あなたには、
出来る限り、
たくさんの話をしたいから、
たくさんの感じたこと、気持ちを、
伝えていきたい。
「すばるさん、この後、お姉ちゃんのところに行く予定なんですけど。一緒に来ます??」
「…ご挨拶ってやつ」
「いや、そんな、重厚そうなものじゃなくて…」
Fin.