第6章 誰為、己為
「は、ちょ、なんで霄ちゃん、おるん、」
「ヒント、横山くん」
…なっ、あいつ…!
「やられたっ…!」
俺的には隠してるつもりやったけど、あいつにはバレとったってことやろ、多分。
ほんでおかんに「すばるに好きな人出来た」とかいろいろ教えたっちゅーことやな…
霄ちゃんはまだ何も説明がいってないらしく、オロオロとしている。
…実家に霄ちゃんおるって…なかなか…こう、
「んっ?!筑前煮の匂い…」
台所に向かう。
お、わ、
そこには、むっちゃ筑前煮があった。
…もしかして、
「霄ちゃんと作ったんやでぇ〜。なぁー?」
うふふーっと得意気におかんが霄ちゃんを見る。
「へっ?…あっ、はい!その…わたしの要領が悪くて…たくさん、作っちゃいました…ご、ごめんなさい…」
しゅぅうん…とわかりやすくしぼんでいく。
「要領悪くなんかないで!手際も良かったし。他人の、しかも初めて食べた味を覚えるのも再現するのも、簡単なことやないんやからっ!気にせんの!!」
「…ってことはおかんがつくる筑前煮、霄ちゃん、教えてもらったん…?」
今の話からして…
「!はい…勝手に、ごめんなさい…!」
「いや!なんで謝るん!!」
全然悪いことしてへんやん!!
「な、なぁ、これ食べてええん…?」
俺の好きな匂いが充満している。
しかも、おかんのだけやなくて霄ちゃんが作った…
「食え食え〜たーんとお食べ~」
どのお皿使っていいです?と準備をしようとおかんに聞く霄ちゃん。
ほんまこれ…け、結婚した、みたいな…
あかんあかん。
そんなん考えたらあかん。
「すばるさん?」
見とれてしまっていた。
「ん、おぉ、ありがとう」
よそってくれた器と箸を受け取る。
「いいえ」
ニコッと笑いかけてくれる。
…新妻や……
「あっ、妙子さん!洗い物ならわたししますからっ!」
すばるさんと親子水入らずで、と台所におるおかんのところに向かう。
…仲ええ姑と嫁になるやろうな…と自然に考えてまう。
おかんの性格からして、「妙子」と呼ぶことをゴリ押ししたんやろうなぁ…
「んまっ!!」
おかんの味や~!