第5章 友達以上は、何て言うの
トイレから戻り、靴を脱ごうとすると、中から亮の怒鳴り声が聞こえた。
あいつ、また…
襖に手をかけようとすると、霄ちゃんの声が聞こえた。
大倉が俺の肩に手を置き、シィーとする。
立ち聞きするってことか?
その場で、中の声に耳を澄ます。
「筑前煮は、わたしが作っちゃダメだって思ったからです。」
錦「は?」
「もちろん、渋谷さんが筑前煮好きだってのは知ってます。今は友達として交流してますけど、eighterですから。でも、だからこそ、作れなかったです。筑前煮は、渋谷さんにとって大切な料理だと思ったんです。
とっても息子思いの素敵なお母様が作る筑前煮だからこそ、渋谷さんは好きなんじゃないかって。
たくさん、思い出のあるものだと思います。
それを、その味を知らないわたしが作るのは違う気がして。
あの筑前煮は、渋谷さんにとって、大切な人が作るべきものだと思ったんです。」
「上手く言えないけど…そんな感じです。
すいません、語彙力もなくて…」
まっすぐ向き合おうと思って話したのに、上手く伝えれなくて申し訳ない…。
安「…そんなことまで、考えてたんやね…」
錦「……なんやねん」
村「まだなんや言うつもりか、亮」
錦「ちゃうわ。
全然ちゃうわ…
むっちゃええ子やん…!」
横「ぶはっ!!!!」
安「亮、ちょっと、涙目なってるやんかw」
なってないわ!と全力で否定する錦戸さん。
…誤解がとけて良かった。
大「…ええ子やんね、浪花ちゃん」
「おん…」
たまたま出会えたeighterが、霄ちゃんやった。
ただ、それだけかも知らん。
でも、ほんまにこの子は。
むっちゃ、この子の考え方とか捉え方、感性がほんまに好きや。
もしかしたらeighterの中にも同じような子が、おるかもしらん。
でも俺が出会ったのはこの子や。
この子しか知らん。
それでええと思う。
俺が、俺の心が、言うてんねや。多分。
「…友達って、どこまでが友達なんやろな」
大「え?」
「友達以上の気持ちを抱いても、壊したくない時は、
どうしたらええんやろな?」
大倉が困った顔をする。
「すまん」と言い、個室に戻った。