第5章 友達以上は、何て言うの
…普段は顔を真っ赤にしてるくせに。
注意深く俺の手に怪我がないか見てくれている。
そんなに必死になってるのは、犬が他人に怪我させたらあかんから?
それとも、俺やから?
チューできんやったのは残念やったけど、まぁ、冗談で済ませれて良かった。
なんや、ずるいって言われたけど。
話してる途中でアイスを買っていたことを思い出した。
パ○コを買ったと言ったら、途端に霄ちゃんの顔が明るくなった。
コロコロ表情が変わる子やなぁ…
以前、自分は表情が読みにくいんじゃないかと言っていた霄ちゃんだが、そんなことは断じてない。
むしろわかりやすいほうやと思う。
まだ霄ちゃんは学校終わってないみたいやし、
またあとで会えるやん思うて、パ○コをひとつ渡して別れた。
これだけで霄ちゃんに会う前に感じていたジメジメ感がなくなるんやから、
なんとも不思議なことや__________
ドーーーーーーン、とわたしは今、渋谷さんのマンションのエントランス部分に仁王立ちしている。
学校が終わり、服を返すからと三河と別れ、駅とは別方向にあるこのマンションへ来た。
散歩時に予期せぬ渋谷さんとの接触があったから、もう普通に話せると思ったのに。
なかなかインターフォンを押す勇気が出ない。
なんたること…
押すか、押すまいか…
すると、視界の端で、ドアが開き、人が入ってくるのが見えた。
その人に先に済ませてもらおうと、「お先にどうぞ…」と言って譲る。
その人はわたしに不審な目を向けながらも、「どうも」と言って、部屋番号を押す。
ピンポーン…
『あーい…って、なんやヨコか』
「なんやって何やねん!」
『そのまんまじゃボケ入れボケ』
「うっさいわ入ったるわボケェ!」
喧嘩腰やなぁ…て
うん???渋谷さんの声だった??
そんでもってこのわたしの前にいる色白さんは…
『あ?ヨコ、そこズレろ』
「は?」
『ええから、はよ』
も、もしかして…
「わかったて…」
と、目の前の色白さんが横にズレるのを見た瞬間、
わたしは返しに来た渋谷さんの服が入った袋で顔を隠す。
…なんで隠したんだろうわたし……