第5章 友達以上は、何て言うの
あっついなぁ…アイス食おうかな…
冷房つけるほどでもないような気もすんねやけどつけなかったらつけなかったでなんやジメジメして暑く感じる。
「おし。アイス買い行こ」
財布とケータイだけ持って玄関を出た。
今日は霄ちゃんが服を返しに来る。
あのとき、壁ドンってのをしたっきりだ。
…霄ちゃんは、すごく顔を真っ赤にして玄関を飛び出て行った。
バイトの野郎にされたときはびっくりしたって言ってた。
そのびっくりの表情が、あの顔だったら、
俺的にアウト。
あんなん、襲ってくださいって言うてるのも同然や。
どんな顔してたんやろなぁ…。
そんなことを考えながら、コンビニでアイスと冷たい飲み物を買って出た。
マンションに向かって歩いていると、来る時は見なかったピンクの服を着た子が犬の散歩をしている。
あれ…
すごく優しい顔で犬を見ている。
…話しかけてんねや…犬相手に、1人で…
嫌な話、俺が知っている女の中には、異性がいる前では犬に優しくするとか、犬を可愛がるやつが多い。
でもあの子は、素であれなんや…
もう2mというところで犬が俺に気づいて吠える。
それをしゃがんで撫でる霄ちゃん。
犬の視線に気づいてか、その視線を辿り、俺と目が合う。
びっくりした顔をしている。
上だけとはいえ、彼女の制服姿を見るのは初めてだ。
噛む犬さえも手懐けているという彼女。
言い方からして、手懐けているという考えはなく、ちゃんと言う事を聞いてくれるいい子、という感じだ。
先程まで、少し見とれていたのは内緒にしとく。
でもそれだけ噛むと言われると触るのは少し気が引けなくもない。
しかも、ほら!と勧めてくる…
この子、天然のSか??
噛まれるにしても、タダで噛まれるのは嫌やったから、提案をしてみた。
してすぐ犬に手を伸ばすと、難なく触れた。
と思ったら、犬が一瞬、鼻筋あたりにシワを寄せた。
噛まれる、と思った時に
「あぶないっ」
と霄ちゃんがリードを引いたおかげで犬の口は空振りに終わった。
噛まれそうになったことにも、霄ちゃんの判断の速さにも驚いて固まっていると、
大慌てで霄ちゃんが俺の噛まれそうになった手を掴んだ。