第3章 新たな日常
怪我をしたその日、久しぶりに、わたしが渋谷さんに宅配に行くことになった。
「めっさ久しぶりやんな?」
と目を細めて笑いかけてくれる渋谷さん。
だからなんでそんな可愛いの…
「…お久しぶりです、覚えてくれていたんですね?」
何も特別なところのない、わたしは平凡中の平凡だと思っている。特筆することは無い。ただ、苗字が珍しいだけ。
そういう気持ちを込めて、口から出た言葉だった。
渋谷さんは一瞬、ぽかん、として
「どんだけ俺のことおっちゃん扱いしとんねん!wこんな短期間で忘れんわ!こんな童顔の20歳!!」
「ど!童顔の20歳って!まだ20歳じゃないですよ!」
必死に返すと何かがツボにはまったのか爆笑してる。
「…お 先 に 商 品 で す」
とカレーを渡そうと手を出した。
「そんなw区切らんでもwww怒った?」
渋谷さんはカレーを受け取ろうとしてまたしても気づいたらしい。
わたしの指を凝視している。
わたしも忘れていて、渋谷さんの目線を辿ると、
液体絆創膏で抑えられてはいるが、血が滲んで一緒に固まっていた。
「…見らん間にまた怪我したん?」
またって!そんなわたしが何回も怪我してるみたいな言い方!
「そんなにしてないですよ…!これ以外はただの引っかき傷だし…」
「…女の子なんやからって言うても職業が職業やからなぁ…頑張ってる証やんな…」
……なんで渋谷さんがそんな悲しそうな顔するの…
「あ、なぁ!」
場の空気を変えるように渋谷さんが言った。
「?」
「俺と友達になってくれや!」