第3章 新たな日常
………
わたしは店へと自転車を走らせてる途中、
まだ、渋谷さんに掴まれた左腕に、感覚が残っており、
顔の火照りが収まらずにいた…
家に帰っても、まだ、ポヤーっとしていた。
「霄?どうしたん?」
と肩を揺すられたので、
「こ、の、我の、左腕を、お天使さまが、掴みはったんや…」
とわけのわからんキャラで説明をすると、
お天使さま、で汲み取った我が最強にして最愛の姉は
「な、なにぃーーーーー!!!?この、この腕か?!
この腕を、お天使さまが掴んだというのかーーーー!!!」
とこちらもまた合わせてわけのわからんキャラで返してきた。
浪花家は関西出身の方々ほどではないが、ノリが良い。
「そんな腕は……
こうしてやるーー!!!!!!」
いきなり、ガッと、掴んでギューーーっと両手でひねり出した。
いわゆる「雑巾しぼり」
「いででででで!肉が!」
「何が肉じゃ!そんなもん、なかろうて!」
「いや、姉ちゃんがそれ言ったら相当な嫌味だわ!」
姉は細いのである。
わたしより身長あるのに、体重はわたしと変わらないか、下手すれば姉の方が軽い。
不公平だ。
しかも食べても食べても太らない体質ときた。
もうこれは死ぬ気で妬むしかない
と言いたいところだが、
姉には、
代わりに、
乳がない。
スレンダー過ぎた!スレンダー過ぎたんだよ!
「うるせー!乳よこせ!!」
乳のことになると、普段の優しさはどこかに旅へ出る。
でもわたしからしたら、デブに見えるからいらないものと思ってしまう。
まぁ、デブに見えるのは乳のせいではなく、お腹のせいじゃないかなとは薄々気づいている。
「でもいいなぁー」
「乳が?」
「次そっちの話だしたら覚えとけよ」
「さーせん…」
「姉ちゃんもすばるに会いたーい!もっと言うならヤッさんに会いたいー!!!」
だろうなぁ…
かと言って、渋谷さんに、「姉がヤッさんのこと愛してるので会わせてください」なんて言えるわけがない。
というか言っちゃダメだろう。
姉もそんなことはわかってるらしく、言わない。
つくづく、考えの似ている姉妹だな、って思う。
「でも良かったね、宅配、何回も頼んでくれて。」
「うん。夢みたい…」