第3章 新たな日常
「…ほんと、そういう冗談、やめてくださいよ…」
ほんとに、これはホント真面目な話、心臓がもたない。
「ごめんて、許してや」
そんな風に小首を傾げられて許さないと思ったか。許すわ!くそ!
「、わ」
わ?
「腕、すごいな?」
あぁ、
「今日、すごい子に当たっちゃって…。
爪切ってちゃんとヤスリかけても体重とかで跡、ついちゃうんですよ」
今日はシャワーの音にびっくりした中型くらいのサイズの雑種にひっかかれてしまった。
と言うとすばや…じゃなくて渋谷さんは(プライベートだからね!すばやん呼びは心の中でもやめようと思って!)
跡がついて赤くなってるわたしの左腕を掴んで持ち上げた。
「!!」
「…トリマーって大変なんやなぁ…痛くないん?」
「…ただの蚯蚓脹れなのでもう痛くはないですよ。
それに、多分大変だからこそやりがいがあるんでしょうね」
「、ほら!大変じゃないと働いてる感じ、しないじゃないですか!」
あまりにじぃーっと目を見てくるので恥ずかしくてわざと声を大きくしてしまった。
それでハッとしたのか、渋谷さんはわたしの左腕を離した。
つかまれていたところにまだ、熱が残る。
「そう、やんな…俺もそう思うで。
なんや若いのにしっかりしとんな!」
ハハッと笑う渋谷さんはどこか様子が違った。
不思議に思いながらも
「若いって言ってももう今年で20歳になっちゃいます」
「そんなん言いなや〜俺なんか今年で34……はっ?!」
34なるなんて知ってますよ!eighterですからね!とドヤッとしようとしてたところで急に声が大きくなって、
思わず、ビクッと肩を揺らしてしまった。
「20歳?!?!」
「そう、ですけど…?」
「高校行かずに専門学校行ってるもんやと思ってたわ…!」
……
「よく…言われます…」
そう、わたしの家族はみんな童顔で、よく実年齢より下に見られる。
しかも黒髪のまま1回も染めていないし、汗っかきだからと化粧も全くしてないので、下手したら中学生と言われることもあるくらいだ。