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第8章 あなたと



「、すばるさん、口、」

「ん?」

顎を突き出すように首を傾げる。


「口紅、ついてます…」

ん、あぁ、と指で自分の唇をなぞる。

その仕草さえ見惚れてしまう。

「そんな見つめられるとまたしたなんねんけど?」

「へ、えっ!」

慌てるわたしを見てすばるさんが楽しそうに笑う。


「…ひとまずここから離れんで」


すばるさんが目だけで周りを見る。

チラチラと横を通る人たちがこっちを見てきているのがわかる。
人混みの中とはいえ、こんな公共の場でキスしたんだからそりゃあ見られるに決まってる。


「み、見られてたんですよね?!」

キスされたことも、それを見られていたことにも顔が熱くなる。


「おん。行くで」

また、すばるさんがわたしを引き寄せ、はぐれないように、密着して人混みから逃れようと早足で進む。




ち、近い


横を見るとすぐ近くにすばるさんの顔がある。
前を見据えた真剣な瞳。



ドキッ、と胸が鳴る。

いや、さっきから鳴り止んでない。



「…見すぎやって」

?!

視線を変えないまますばるさんが言う。

バレてた…!







「ここら辺ならええやろ。」

人混みから離れ、少し建物の影に入る。


「そう、ですね、」

同意するも、どうしてもぎこちなくなる。


「なぁ、さっきはついたまらんようなってしたんやけど霄ちゃんも俺のこと、好きやってことでええやんな?」

じぃ、と見つめられる。


そ、んな改めて聞かれると恥ずかしい…

口を開いても上手く声が出せなくて、コクリ、と頷く。


途端、ぎゅうっ、と抱きしめられる。


「っ、!」


「はぁー良かった…」

耳の後ろで息を漏らすように言う。



どれだけそうしていたかわからない。

何十分だったかもしれないし一瞬だったかもしれない。



「、答え、分かった?」


「へっ?!」


「俺もう答え言うたんやで?」

「え?!いつ!!」


「わからへんのん?」

体が少し離れて、ようやくすばるさんの顔が見えた。


「え?、っと…」

必死に頭をフル回転させる。

ま、待ってよ、すばるさんが言った言葉、すばるさんが言った言葉…









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