第8章 あなたと
こんな、お祝いの日に、
「、も、しもし…?」
『霄ちゃん、今どこおる?』
突然、なに…?
「どこって…成人式の会場ですけど?」
昨日、言ったのに…
『おん、せやから、そこの、どこや』
「え?」
どこって言われても!
え、っと…
建物の外の…
「建物の出入り口付近?です」
『ほなそこからなんやオブジェみたいなん見えるやろ?』
オブジェ…って…あれかな?
人の形のような滑らかな線の石像が少し遠くに見える。
「道路側のですよね?」
『おん』
「っていうかなんでそれがあるって分かるんです?」
『おるからや』
「へっ?!」
は?!何?!
どういうこと?!
「や、あの、おるってどこに?!」
『やから、そのオブジェみたいなんの近くや。そこまで来てくれへん?俺から行ってもええんねやけど霄ちゃんのおるとこ、全然わからへんし』
な、なんで?
来るって聞いてない
「い、じゃ、あ、向かいます、けど」
とりあえず、少し遠くに見えるオブジェを目指す。
人で混雑していて、なかなか思ったように進めない。
しかも着物だから帯が崩れないようにとか、ヘアスタイルが崩れないようにとか考えると動きにくい。
会場につき、タクシーを降りる。
(この子らが新成人か…)
図らずとも、自分の成人式を思い出す。
まだデビュー前で、恒例のテレビに映るジャニーズの成人式のにも呼ばれへんやったあの頃。
皆、思い思いに懐かしい友達たちと話したり写真撮ったりしている。
ヤスから連絡が来た瞬間、霄ちゃんに電話をかけた。
電話をしながら、場所を伝えると、人混みの中にきょろきょろとしてる霄ちゃんの姿を見つける。
このたくさんの人の中で、霄ちゃんが、俺だけのことを探してると思うと、グッと来るものがある。
思わず、
駆け出す。
「霄ちゃん」
電話が繋がったままのケータイを耳に当てたままキョロキョロしていると、名前を呼ぶ声とともに手を掴まれる。
「す、ばる、さん、」
振り向くと、電話のお相手の、すばるさんだった。
こんなに人が多いのに帽子も伊達メガネもマスクもしてない。