第8章 あなたと
「そ、そう、なんだけど!声!大きくなってる!」
少し声を潜めて、急いで注意すると、ハッとして「ご、ごめんっ」と言って落ち着く。
…
「…あと、手…」
握りっぱなし…
顔に熱が集まる。
「は、わ、こっちもごめん!!」
私の赤い顔を見て、ヤッさんが慌てて手を離す。
その後、少しだけギクシャクした私達だった________________________
はぁー…明日は緊張するなぁ…
ぶっちゃけ、中学までの同級生なんて全然覚えてない。去年、某連絡アプリのグループに紹介されたけど、その中の名前を見ても全然思い出せない。中には少しやり取りしている子もいたけどその子くらいしか…
あぁ、今まで友人関係とかサボってたツケが回ってきたなぁ…
明日、一緒に行こう、なんていう約束をしてる人もいない。
なんと寂しい交友関係よ…
でもしょうがなくない?裕福じゃない人は中学時代にケータイなんて持ってないんだもの。当時はお父さんが単身赴任しててパソコンも持っていかれた時代もあったし?メアドも交換できなかったというか…
何にしても言い訳ばかりだなぁ、わたし…
「浪花さん、彼氏とかいるんですかー?」
ヘアメイクをしてくれている店員さんが言う。
「いないですよ〜」
1、2度くらいしかいた時代がない。でもみんなみたいに恋に恋してるとか、本気でその人じゃないといけないくらい好き!っていうものじゃなかったから、すぐにあっけなく終了を迎えたけど。
「じゃあ、好きな人は?」
好きな人は、いるけど、言っちゃいけない、
「あっ、顔真っ赤なったね!いるんでしょー?」
う、この赤面症め…!
「い、いるんですけど…多分、わたしは友達としか…それか妹分としか思われてないですよ」
「うーん…じゃあ、年上の人なんですね?」
「はい。ずっと年上です…わたしはその人が好きだから年齢なんて別にいいんですけど、向こうからしたらこんな年下、範疇にないんだろうと思います」
言ってて自分でも悲しくなる。
「でも明日で大人になるわけでしょう〜?節目として告っちゃったらどうです?」
ふふふっ、と店員さんが笑うけど…
他人事だから笑えるんだ!と恨めしくなる。
「人生の節目に振られるなんて嫌ですよ…」
最悪な節目になるわっ!