第8章 あなたと
「…またきつい入り方をするのですね…」
ナームーと手を擦り合わせる。
「明日の夕方?かな。それで村田さんと藤村、最後でしょ?一緒に入るの。」
井浦くんがシフト表を見ながら言う。
のぞき込むと、確かに、明日以降はそのふたりと入っておらず、ずっと緋刈くんの名前が書いてある。
「可哀想な入り方だ…」
恐ろしい…
「主に俺のせいだ!」
アッハハハッと他人事のように笑う。
こんな楽しい人たちともお別れかぁ〜感慨深いなぁ〜
「カウコン始まる!」
毎年観てるカウコン。
「いやぁ〜今年も終わりますなぁ〜」
バイトも終わり、ようやく集まった家族で年明け前を過ごす。
ブブッ
ん?
始まる前に、予想外の人からメッセージが来た。
『テレビ越しに明けましておめでとうって言うからな!』
と、ライヴ前のすばるさんからだった。
始まる前なのに、すごい…!
急いで送ってくれたんだろうなぁ…
間に合うかわからないけど、わたしも急いで、
『じゃあ、わたしもここから、すばるさんに言いますね!』と送った。
場所は違えど、
過ごす時間の流れは一緒なんだと、なんだか嬉しくなった。
今年は小さな幸せも大きな幸せも実感出来た年だったなぁ…
「あ、始まった」
と横に座る姉が言う。
「変な感じだよねぇ…この中にいる、ステージに立っている人たちと連絡とってるんだからねぇ…」
ヤッさんと連絡の取り合っている姉が言う。
「そうだねぇ…」
と、画面にすばるさんが映る。
「!!」
一瞬
一瞬だったけど、
にぎにぎピースしてた。
片方だけの。
誕生日の日、ふにゃふにゃとした記憶の中で、すばるさんがわたしのことを見つけたら、にぎにぎダブルピースをするという合図を決めてた。
それを今、片方だけとはいえカメラに向かってしてた。
自惚れだとは思いつつ、それでも『もしかして』と思ってしまう。
「もうほんとにすばるさん、ずるい」
いつだって簡単にわたしの心を奪っていく。
しかも、無意識に。
きっとすばるさんにとってはなんてないことなんだろうな…。
だって、
【友達】だもん。