第8章 あなたと
「あ、そういやぁマフラー、新しいの買うたんやね」
おしゃれ番長(笑)のヤスが気づく。
「あ!それ思った〜見たことないやつやんな〜って」
とマルも便乗する。
「や、これ、あの」
霄ちゃんが普通に使ってええって言うから寒い時につい、使ってもうてる、あのマフラー。
…微妙に霄ちゃんの匂いがする。
「買うてはないねん、」
ん?となるメンバー。
実はあの話をしていない。
「これはー、そのー」
「へっ、くし」
「風邪じゃないでしょうねー」
「そこはちょっと、大丈夫?から始めてくださいよ…」
ズビ、と鼻をすする。
大掃除で、昼頃には終わるので、ということで、今日はバイトを入れないでおいた。
三河とカフェで話してから帰ってきた夕方。
「噂でもされてるのかな〜」
よく噂をされているとくしゃみが出ると言うが、あれは本当なのだろうか。
と、ケータイがなる。
『浪花!!あんましすばるに物貸しなや!』
村上さんから。
…うん?
物って…マフラーのこと?
『大丈夫ですよ、汚されても泣きません!』
よっぽどの汚れじゃない限り、落とせるし。マフラー、形は違えど、ストールにも出来るっていう他のマフラーもあるし。
『そういう意味とちゃうわ!』
とツッコミ。
じゃあ、どういう意味ですか…
『意味はいつかわかる!!』
アバウトだなぁ!!
クリスマスが過ぎ、またバイトの日々。
冬休みだから朝から駆り出される。
「あー、寒い」
宅配ももう手が冷たくてしょうがない。
「あ、俺、今日で最後だよ」
と井浦くんが言う。
「最後って?」
「浪花さんと入るの。」
「え!まじで!」
「うん。明日から実家の方に帰るから。戻ってきた頃には浪花さんが辞めてる〜」
「はらぁ〜それはそれは…」
今までお世話になりました、と深々とお辞儀をする。
いえいえ、と井浦くんもお辞儀をする。
「寂しくなるなぁ」
と、笑う。
「そう思ってもらえるのは嬉しいですなぁ」
ちゃんと、わたしがここにいた証みたいで。
「藤村は泣くな!」
「な、泣かないでしょう、さすがに」
どうかなぁ〜とニヤニヤする井浦くん。
「明日からは緋刈が入りまくる。」