第7章 隠しきれない。
「、そう、なんですね…」
霄ちゃんがしょんぼりとする。
その反応に、期待してしまう。
ついさっき、自分自身で自惚れだったとか考えたくせに。
…ん?
『きっかけはバイト』
『ずっと前から好きだった』
『言っちゃいけない』
もしかして
「なぁ、霄ちゃんの好きな人って、」
と言ったところで霄ちゃんの様子に気づく。
テーブルにでこがくっつくレベルでがっつり頭を垂れ、ゆったりと肩が上下している。
微かに「すー、」と聞こえる。
「…んな、ベタな」
このタイミングで寝るんか。
霄ちゃんを起こさないように、静かに女将さんを呼び、会計を済ませる。
「少しだけ、寝かしてやってもええですか?」
「あぁ、いいですよ〜毛布、持ってきますね」
起こすのも可哀想な気がして、女将さんに借りた毛布を霄ちゃんに掛けてやる。
…寝転がしたら起きるやろか…
どうもキツそうな体勢に見えてしゃーない。
霄ちゃんの隣に座り、ゆっくりと肩に手をかけ自分の方に倒す。
意外にスムーズに自分の膝に霄ちゃんの頭を乗せることが出来た。
カラオケの時は今とは反対で、俺が霄ちゃんに膝枕してもらってたけど…
案外、する方もええかも知らん。
下を向けばすぐに霄ちゃんの寝顔が目に入る。
パラパラと少し広がる黒髪に指を通せば、さらり、と抜ける。
「綺麗やなぁ…」
思わず、ポツリとこぼれる。
それと同時に湧き上がる、感情。
「霄ちゃん、
好きや」
髪を撫でながら、眠る彼女に言う。
「霄ちゃんのことが、好きやねんで?俺。
好きなんは、霄ちゃんだけやねんで。」
いつからこんなに意気地無しになったのか。
前は何でも言ってたのに。相手のことなんか気にせず。
あれは恋愛じゃなかったんやろか。
この子を前にすると、素直になれるけれど、肝心の言葉が言えない。
こんな風に、眠ってる間にしか、言えない。
この想い、
君に
伝わっとるか?