第7章 隠しきれない。
もっと前の、霄ちゃんを知れてたなら。
何か、変わってたんやろか。
例えば、霄ちゃんが、俺の近所に住んでたなら。
例えば、霄ちゃんが、俺と同い年やったら。
考えても仕方ない「例えば、もし」が次々と頭に浮かぶ。
「すばるさん~?」
ハッとすると、俺の目の前で霄ちゃんが手を振り、俺の意識を確かめていた。
…霄ちゃんは、
そんなこと、考えてくれてたりしないのだろうか。
「なぁ、霄ちゃん」
はい〜?と首を傾げる。
「好きな人、おるん?」
ぽかん、と霄ちゃんの口が微妙に開く。
「…いますよ」
少し酔いが覚めたのか、少しだけ喋り方がしっかりする。
…おるんや…
「だれや。バイトのやつ??」
ふるふる、と横に首をふる。
「……きっかけは、バイトですけど…ずっと前から。
でも…わたしは、言っちゃいけないんです」
悲しそうな、切なそうな目で、俺を見る。
「言っちゃあかんて?」
だれや。霄ちゃんの、好きな人は。
霄ちゃんの心を占領するやつは。
「想いを、言っちゃダメなんです
内緒、ですよ」
さっきとはうってかわって、切なそうにしぃー、と口の前に指を持ってくる。
今すぐ、抱きしめたい。
でも、
霄ちゃんには好きな人がおる。
困らすだけやないか。
きっと、歳の近い、奴なんだろう。
10以上離れた俺のことなんか。
勝手に打ち砕かれ思いになっていると
霄ちゃんから、同じ質問をされた。
「、すばるさん、は?」
泣きそうな顔で、見つめてくる。
そんな顔してる君が
君のことが、
「おるで」
ほんまは、今日言うつもりやってんけど。
もう、無理かも知らん。
霄ちゃん酔うてるし。
…好きなヤツ、おるらしいし。
ほな、今までのあの顔はなんやったん?
真っ赤にした嬉しそうな顔、照れたような顔、
なんやったん?
俺の、自惚れはやっぱり自惚れでしかなかったんか?