第7章 隠しきれない。
ふにゃーんふにゃーんってしとる。
「だぁからわたしたちが怪我するんですう」
ぶぅ、と口を尖らせる。
(可愛ええ…)
向かい合って座ってるからもろに分かる。
「でも噛み犬のほうが好きなんやろ?」
「あい。我慢できる子もいるんですよ~」
と、グラスに手をかける。
「あぁ、あかんて。もう飲まんどきや」
グラスを取り上げ、頼んでおいたオレンジジュースを渡す。
「20歳なったのに~」
残念そうに眉を下げながらジュースに口をつける。
「あっ」
ん?
「ライヴ、行くって言いましたっけ?」
突然思い出したようだ。
「何の?」
「関ジャニ∞のに決まってるじゃないですかあ」
ふにゃら、と首をかしげながら笑う。
「はっ?聞いてへん!いつや」
「年明けの…えっと二発目です~…み、っか?」
ぽけぇ~とする。
「見つけれるやろか」
ステージから見えなくもないけど後ろの方すぎると見えない。
「んんー内緒です」
にしし、と人差し指を口に当てる。
楽しそうな顔。
「なんでや!」
「今はお友達のすばるさんですけど~ライヴのときは、違いますから」
「は?」
霄ちゃんがどう伝えたらいいのか、酔った頭で考える。
「ライヴのときは関ジャニ∞のすばるさんでー…ってことはeighterのすばるさんだから?です??」
んーんーと左右交互に首をかしげだす。
「…なんとなく分かった」
多分。
霄ちゃんなりの、線引き。
「…でも、見つけたるからな。」
「んふふっ…じゃあ見つけれたらなんか合図します~?」
「ん~合図なぁ…」
「んっ!にぎにぎダブルピースで!!」
顔の両側にピースを持ってきて、にぎにぎと人差し指と中指を動かす。
「おぉダブルな」
「これ、わたし、すばるさんが近くに来たら毎年やってたんですよ」
スッと目を細めて笑う。
「まじか」
「はい~」
不思議な感じがする。
知り合ったのは今年。
いや、俺が霄ちゃんを知ったのが今年。でも、霄ちゃんは俺を、だいぶ前から知ってた。
この気持ちはなんて言えばええんねやろ。
「…なんや俺、損してた気ぃするなぁ」
霄ちゃんは分からなかったらしく、首を傾げる。
もっと早く、霄ちゃんを知れてたなら。