第7章 隠しきれない。
「えっ、じゃあ浪花、Sさんと呑み行くん?!」
「あっ!恋バナ!?」
またもや先生が食いついてくる。
「浪花がねぇ誕生日に好きな人と会うんだって!」
そしてまたもや三河が大声でばらす。
「前言ってた人?!進展あり??!」
ぐいぐい先生が来る。
「進展、ってほどはないですけど…」
「けど??」
「絶対ないって思ってるのに、わかってるのに…
勘違いしちゃうようなことされたり言われたりすると自惚れちゃうんですよね…」
笑い方とか、話し方とかも。
「恋じゃーーーーん!!!」
先生が嬉しそうに言う。
「もうほんとに恋じゃん!しかもなんか純愛感!!」
「じゅ、純愛?!」
純愛とは…?!
「浪花が純愛(笑)」
「三河わたしに失礼」
「ちょっと、いいですか」
嫌な、声が、する。
振り向かずともわかる、嫌な声。
わたしが動かずにいると、前に回り込んでくる。
「お久しぶりですねぇ、浪花さん」
あの時と同じ男が言う。
「いつわたしが浪花さんと言いましたか」
「とぼけても無駄ですよって。」
「…でしょうね。どうせ、尾けたりなんだりしたんでしょう。」
前回と同様にケータイを取り出し、録画の準備をする。
「証拠取り、ですか?」
男も前回と同じだと考えたようでニヤリと笑う。
それだけで分かる。
もう、この手は通用しない。
「…そうですよ。でも、今回は前と少しだけ。
違うんですよ」
焦りと恐怖。
声が震えないように。
「違う?…良い話ですかね?」
「…どうでしょう。」
「では…渋谷すばるさんとの御関係を、
教えていただけますか?」
「お友達です」
きっぱりとわたしは言った。