第6章 誰為、己為
「また来てくれるんですね!じゃあ、また…」
と、遠慮がちに手を振る。
(かわええ…)
「おん」と、勢いよく手を振り
待たせてあるタクシーに向かう。
ぶっちゃけ、夕飯は緊張した。
ただの友達の家ならええねん。
でも、
俺としては霄ちゃんは
友達以上の存在。
全然そんなんとちゃうのに、
なんや挨拶行ったみたいな…
しかも、いらんこと言うたせいでガチャピン着ての夕飯。
霄ちゃんのおとんもおかんもおるのに…
訪ねた時はおらへんかったから、多分霄ちゃんと話してる最中に親父さんも帰って来たのだろう。
降りたら目が合うて、
ガチャピンの暑さじゃない、冷や汗が出た。
でも親父さんは全然怖くなくて、
「いつも見てますー。画面越しで!」
なんて茶目っ気たっぷりやった。
少しやけど一緒に過ごして分かった。
むっちゃあそこの家は居心地がいい。
「この家やからこそ、霄ちゃんはこう育ったんやろなぁ」と実感した。
そういえば、近いうちに前撮りってのをするらしい。
成人式の為の着物着て記念に、と。
霄ちゃんの着物は青。
「なんで赤やないん!」ってつっこむと、何故か顔を赤くしながら
「や、あの、お姉ちゃんが赤やったし…あんまかぶらない色がいいなぁーって思って…それに赤だったらもろ担当ってわかるじゃないですか」
と。
いやいや、赤選んだだけで俺担当とか誰も思わへんやろ。
俺のメンバカラー着てたら、俺の物って感じがしてええなぁとか
ちょろっと覗いた独占欲は内緒。
あとお姉さんはヤス担らしい。
今回のことで連絡とったことについて、
「これ消した方がいいですよね」って言うてたから
「いや、連絡しあったらええやん。友達なりぃや」と
ゴリ押ししといた。
ヤスにも霄ちゃんの姉ちゃんと友達なれ!って言うとこ。
真面目な話、
正直、今どうすればええかわからん。
今日はことが事やから会いに来てしもた。
でも、
これからは?
【友達やねんから普通に会えばいい】
それは正解なのか、不正解なのか
変に気にした方がいろいろ噂されるかも知らん。
でも、だからって今まで通り会ってたら
また記者に捕まるかも知らん。
俺はええ。
でも霄ちゃんは。
ずっと堂々巡り。
(煮えきらんなぁ)