第6章 誰為、己為
「で、お姉さま」
すばるさんを玄関で見送り、
すばるさんから見ると死角にいたお姉ちゃんに向き直る。
「…何かな☆」
妙な笑顔。
「全部、説明してもらいます!」
ガバッー!と姉ちゃんに向かって飛びつく
と、
それを躱し
「クッキー一緒に作ってあげたからチャラですう〜」
と逃げていく。
「ちょっ、それ、9月の話じゃん!」
「はぁ〜」
「どうしたー」
ソファでごろごろする。
「なーんかずる休みしてる気分。」
「ずるじゃないでしょー
全身打ってんだから」
そう、全身。
酷いところには湿布も貼ってる。
結局、血は出てないものの、打ち身みたいなもので、
いつものようには動けないので休むことにした。
あの女のことは、別にどうでもいい。
事件にしたっていいけどめんどくさい。
でも隠すつもりもないから聞かれたら本当のことを言うつもり。
「いやぁ〜でも昨日は良かったねぇ」
ニヤァと笑う姉。
ちなみに姉は普通にお休み。
「良かったって」
「もちろん、すばやんが来たことでしょう!」
「…言うつもりなかったのに」
本当に、言うつもりなかった。
言ったら迷惑になる。
それに
心配性のすばるさんは
わたしなんかを気遣ってくれるすばるさんは、
きっと自分を責めるって思った。
案の定
自分のせいだって考えてたみたいだし…
あのお互いの考えが似てると話した時間。
すごく、優しい時間に思えた。
それにもしかしたら、
今まででいちばん、距離が近かったかもしれない。
物理的にも
精神的にも。
…そして自爆。
思い出した…物理的な近さ…
おでこ、こつんされてた…
目と鼻の先とはあのことか…
「…おい、何ひとりで顔赤くしてんのよ」
み、見られてた…!
「何があったか言いなさいよ〜」
ぎゃあ~とはしゃぎだす
まだ、問題はあるかもしれない。
けど、わたしは、
あの人とあの人をとりまく環境も含めた、
宛てたこの、言っちゃいけない気持ちは
変わらないようだ__________