第6章 誰為、己為
「いや、やって、霄ちゃんやって俺の寝間着見たやん。お互い様や」
「えっ
わたしいつすばるさんの見ました?」
「あー…霄ちゃんが朝帰り?してきたとき」
朝帰りって…
「!朝帰りって!ボーリングして来たときでしょう?!しかもあれ寝間着って!ただのTシャツでしたよね?!」
ぎゃあ!と霄ちゃんが真っ赤にした顔を布団で隠す。
正直、今の格好ものっそい、ええ。
最近肌寒いためか、フリース生地の上下揃ったパステルカラーの水色。
うさぎがモチーフのようだ。
「…なぁ、これ、うさぎなんのってうさぎ好きやから?」
よく見ようと裾を引っ張る。
「へっ?あ、そうですそうです。
フードに耳もついてるんですよ!
もっと寒くなったらガチャピン着ます」
布団を顔から外し、真っ赤な顔のまま話す。
「、ガチャピン?」
ガチャピンってあの、どこか亮に似てる?
「ガチャピンです!ちょっと待ってくださいね」
よっこいしょ、とベッドからおりて、クローゼットに向かう霄ちゃん。
バッと何やら黄緑いものを取り出す。
「ほら!」
「ぶっ」
モコモコした、見ただけでも暖かいと分かるようなガチャピンのツナギ。
「ほんまもんやんwww」
「これ、すごくあったかいんですよ〜
フリーサイズだし、すばるさんだって余裕で着れますよ」
にししっと悪戯顔で笑う。
「…霄ちゃんとサイズが変わらんって言いたいんか」
じと、と睨んでみる。
「ふふっ
着てみます?」
「着たろうやないか!」
「わっ!ほんとですか!」
キラキラと輝く霄ちゃんの笑顔。
…いらんこと言うたかな
結局、ガチャピンを着ると、
霄ちゃんがお姉ちゃんまで呼んで、
撮影会になって、
しかもそのまんま夕飯も食べた。
まだこのガチャピン、暑いわ…
「すみません、送れなくて」
玄関先で霄ちゃんが言う。
「ええねん。怪我人病人は大人しゅうしとけや。
タクシーあるし。
…てか俺男やし」
女の子を男が送るんはわかるけど。
逆はおかしいやろ?
「でも…せっかく来てもらったのに…」
しゅん、と項垂れる。
「…ほな…また来るわ。
そん時な。」
そう言うと霄ちゃんは嬉しそうな顔をした。