第6章 誰為、己為
「わたし、すばるさんと出逢わなかったことに、したくないんです」
霄ちゃんが、
切なそうに、
今にも泣き出しそうな顔で言う。
(ほんまに…)
「考えてること、一緒やったんやなぁ…」
霄ちゃんに手を握られたまま、
ぽすん、と霄ちゃんの肩に顔を埋める。
こんなに、短期間で
人は惹かれ、恋をする。
初めて知った。
「霄ちゃん」
霄ちゃんの肩に埋めたままなので、表情は見えない。
「はい?」
「言いたいこと、あんねん」
「?なんですか?」
「今は言わん」
ぐりぐりーと頭を擦り付ける
「ええっ?!」
しかもこしょばい!と笑い出す。
「いつか、言うから。
…来年の一月までには」
俺の中で思う、区切りで。
「うーん?
何か発表ですか?」
俺が頭を押し付けてる方とは逆に
霄ちゃんが首を傾げる。
「おん。発表っちゃあ発表やなぁ」
激しくノックされる。
「ノックしてもしもーーーーし!」
瞬間、バッとすばるさんと離れる。
そして、それとほぼ同時に勢いよくドアが開いた。
「夕飯なんですけど、すば、じゃなくて渋谷さんもご一緒にどうですか?」
お姉ちゃん、すばるさん来てるって知っててそのテンションで入ってくるのはやばいです。
すばるさんはもうそれどころじゃないかのように爆笑している。
「ノックしてwwwwwwあかんwwwwww」
どうやら、わたしと姉では普段からやっているネタ?が受けたようで。
「はぁー…
あ、でも、俺は」
「すばるさん、食べて行かないんですか??」
すばるさんの顔をのぞき込む。
「っ!
た、べて行くわ」
一瞬驚いた顔をしていたけど
そんなにのぞき込むスピード早かったかな??
「じゃあ霄、渋谷さん連れて降りてきてね。
あっ、あと渋谷さんの前だからってもう外着とかに着替えんなよ」
バチコーン!とウィンクをしてドアを閉じた。
…
……
「っあー!!!」
急にわたしが叫んだので、
すばるさんがビクッと肩を揺らす。
「ど、どしたん」
心臓あたりを抑えている。
「寝間着なの、忘れてた…」
はっずかし!
「…もう、いまさらやん」
「そ、そうですけど!
うわっ!呆れた顔してますよね?!」