第6章 誰為、己為
「なんで…」
いるんですか、と言おうとしたのに
すばるさんに遮られた。
気づくとすばるさんの腕の中。
力が、強い。
「いっ」
「すまん」
わたしの髪に顔を埋めているようで
くぐもった声が聞こえた。
「…?すばるさん?」
少しだけ離れてわたしの顔を見るすばるさん。
「あの、」
なんでわたしの家にいるのか
なんでぎゅってされてるのか
なんで謝るのか
どれから質問したら…?
わたしの表情からなにか読み取ったのか、すばるさんが眉を顰める。
「全部、聞いた」
「…え?」
全部?全部って
「記者のやつに話しかけられて、ヒナに相談したんも、
今日、階段から落とされたことも。」
そんな…
「ヒナに俺には言うなって言うてたんやろ?
責めんといたってくれ」
「や、それは、まぁ、はい…」
でも
「なんで今日のこと、知ってるんですか?」
ケータイにはさっき触れたばかりで、村上さんたちには連絡してない。
「お姉さんから」
「はっ??え???」
お姉ちゃん?!なんで?!
会ったことないよね??
すばるさんはわたしの頭を一撫でして言う。
「霄ちゃんのケータイ、ちょーっと拝借してヤスに連絡したって。」
「ふぁっ!なんてことうぉ!」
「ハハッ
ちゃんとロックかけとかなやで…」
「いや、わたしと姉じゃそれ意味無いんですよ…」
「?」
「仲良すぎてお互いのロックナンバー知ってるんです…」
ぶはっ!とすばるさんが笑う。
「なるほどなぁ〜
でもそのおかげで助かったわ」
そう言うと、すばるさんが真剣な顔になる。
怒られる
反射的に目を瞑り身構えると、衝撃ではなく、
優しい温もりに顔が包まれた。
こつん、と額に何かが当たる。
「心配、したんやで」
すばるさんの声に目を開くと
数センチもないところにすばるさんの顔があった。
「っ!」
思わず後ろに下がろうとしたけど、
顔をしっかりと掴まれていて動けない。
「ちゃんと、何かあったら話せって言うたやん
俺じゃあ頼りにならへんやったん?」
切なそうに眉が下がる。
違う
そんな顔させたいんじゃない。
そんな顔させないために
言わなかったのに。
「ごめん、なさい…」