第6章 誰為、己為
どうしよっかなぁ…
普段話しかけてこないくせに
今だけ話しかけてくるなんて都合良すぎ。
話す義理なんてない。
でも、
一応、答えてあげよう。
後から無視しただなんて言いふらされたら
どうせわたしが悪いみたいな扱いになるだろうし。
そんなの、今まででもたくさんあった。
「何のことだか」
それだけ言って
階段を上がろうとした。
が、
わたしの体は大きく後ろに引っ張られ、
階段を踏み外す。
全てがスローモーションに見えるってこのことか。
そう思った瞬間、体に衝撃が走る。
「い、った…」
あと1、2段で教室にたどり着くとこまで登ってたはずなんだけどなぁ
踊り場まで落ちた、
いや、
落とされたらしい。
見上げると、
階段の途中にあの女が立ってる。
「ごめーん」
そう言い立ち去る。
背中が痛い。
お尻とかも。
いろんなところを打ったらしくズキズキと鈍い痛みがある。
頭も打ったようだが、触っても何も無い。
まぁ、そんな血までは出ないよね、さすがに。
するとドタドタと階段を降りてくる音がする。
「霄ちゃん!大丈夫?!」
「、せんせい」
先生の後にあいつがいる。
「浪花さん、階段をすれ違う時に急に後にぐらついて…!そのまま…」
あいつが言う。
嘘を、いけしゃあしゃあと。
よく言うわ。
「霄ちゃん、立てる?痛い?!」
「た、立てると思います…」
姿勢を前に倒し、
手を地面につく。
グッと力を入れた瞬間、
肘あたりにピリピリと痛みが走る。
あっ、と思った瞬間、
立とうとしていた足に力が入らず崩れ落ちる。
「霄ちゃん!?」
先生の声とまた数人、降りてきた音が聞こえた___
「へっ?!」
楽屋でギターを弾いていると、
目の前のテーブルに置いていたケータイの画面がつき、
通知がきた。
名前は浪花ちゃんだけど、
画面に途中まで出てる文には違和感。
ギターから手を離しケータイを手に取り、メッセージを開いた。