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第6章 誰為、己為





バイトでは何か言われるようなことは無かった。

若い女の人のお客様自体、普段から少ない。

独り身のおじさんやら男の人やらが多い。

今日一緒に入ってる緋苅くんには

「藤村から告られたんしょ?」と笑いながら聞かれた。

「…うん。本人から聞いた?」

「そそ。泣いてたわぁ」

「え゙っ」

うっそだぁ…

「まぁ泣いてまではなかったけど落ち込んでた。
どうすんの?今日入れ違いとはいえ顔合わせるじゃん」

そう。

わたしは21時までで、
わたしと入れ違えで藤村くんが21時から入る。

「うーん…今までと変わらずに接してくださいって言われてるし…
どうしようもない、よね」

意識する方が気まずくなるし…

ありがたいことだったってことで、
思い出にしなくては。









「おはようございます」


藤村くんが来た。

目が合う。

「おはよ」


あがる際に、

「あの、大丈夫ですか…?」

と、おどおどと聞いてきたので

「誰のせいだと思ってるの」

と虐めてみた。

「え、あっ、すみません、ぼくです…!」
目が泳ぐ藤村くん。

「冗談だよ。大丈夫。何も起きてないよ」
安心させれるように笑う。

「良かった…」
ホッとしたようだ。

「もうこの話もおしまい。
次口に出したらほんとに怒るからね、わたし。」

「先輩、怒っても怖くなさそうですね…」

「なんだって??これでも毎日犬に怒ってますけど」












バスを降りると少し冷たい風が吹く。

そろそろ11月だなぁ…

「すいません、」

家に向かおうとした時、ふいに肩を軽く叩かれた。

「はい?」

振り向くと、そこには見知らぬ男の人がいた。

「浪花…霄さん、ですよね?」



瞬間、

背筋がぞわりと

泡立った。

男は続ける。

口の端を上げ、


「渋谷すばるさんとのことで、

ちょっといいですか?」













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