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カレット

第1章 冷たい手【刀剣乱舞 大倶利伽羅】


「こんのすけ、現世の医師は手配出来るか」

「はい、可能ですがどうされましたか山姥切国広様」

山姥切の声にそちらを見ると、思いの外真剣な目にぶつかる。意図を図りかねている私に気づいて、山姥切が説明を始めた。

「熱こそ下がったがまだ快癒という訳ではないようだからな。気づいていないだけでどこかに不調が残っているかもしれない。それに大倶利伽羅のことだけを忘れているのも気にかかる。一度医師の診察を受けた方がいい」

「それもそうだな、山姥切の旦那の言う通りだぜ。大将、一度現世で医者に診てもらってくれ」

「かしこまりました、山姥切国広様、薬研藤四郎様。至急医師の手配を致します」

私自身はおいてきぼりで、私の診察が着々と決まっていく。検査は受けておいた方がいいと思うから、反対はしないけど。ふと視線を感じて顔を上げると大倶利伽羅さんと目が合った。どこか怒っているような、それでいて悲しそうな目で私を見ている。自分だけ忘れられてたら、そりゃ怒るよね。

「……それじゃあ護衛は大倶利伽羅に頼む。薬研と一緒に現世へ向かってくれ」

突然の山姥切の声に現実に引き戻された。大倶利伽羅さんは盛大に眉根を寄せている。薬研は何か思うところでもあるのか何も言わずにこちらを伺う。大きく溜息をついて、大倶利伽羅さんは山姥切に言った。

「護衛なら初期刀のお前と薬研が行け」

「そうはいかない。俺は主のいない間の本丸の留守を預からなければならないからな」

二人の間に静かに火花が散っているのが見えた。正直怖い。だがそんなこと御構い無しに二人の駆け引きは続いていく。そしてどうやら大倶利伽羅さんの方が折れたらしく、また一つ大きな溜息をついて呟くように言う。

「わかった、ついていけばいいんだろう」

結局最後まで私自身は蚊帳の外のまま、診察の日取りと護衛が決まった。
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