第2章 濡れた肩を寄せ合う雨宿り 【山姥切国広】
「待て!!!」
走り出そうとして、まんばに肩を掴まれる。加減も無しに掴まれて、少し痛い。
「離して!一人にして!!」
振り払おうとして、逆に抱きしめられた。苦しくなるくらい、きつく、しっかりと。
「本当なのか…?俺を、俺の事を好いているというのは本当なのか?」
「うん…ずっとまんばが好きだったよ。だけどもう迷惑はかけないから。今日限りで諦めるから」
震えているまんばの身体を一度だけ抱きしめて、ゆっくりと離れる。
「好きで居させてくれてありがとう。それから、今までごめんなさい」
涙を溢れさせたまま、それでも笑おうとした。まんばは何故か泣きそうな顔をしている。
「もう諦めるから、今日の事は忘れ」
「諦めるな!!!いや、諦めないでくれ…。俺を、俺の事を好きでいてくれ!頼む…」
再びきつく抱きしめられて、一瞬呼吸が止まる。
「俺はあんたが…主のことが好きなんだ。だから頼む、俺を好きでいてくれないか…」
「まんば…?」
「俺はあんたを諦めない。だからあんたも俺の事を諦めないでくれ」
耳元で囁くように告げられて、身体が溶けてしまいそうになる。支えを求めて縋りつけば、愛おしげに頭をなでられた。
「まんばのコト…好きでいてもいいの…?」
「ああ、俺もあんたが好きだ。だからずっと俺の側で俺の事を想ってくれ」
雨宿りの木の下で抱きしめ合う私達を、雨は優しく隠してくれた。