第1章 冷たい手【刀剣乱舞 大倶利伽羅】
視線と沈黙が痛い。言われるままに横になってはみたけれど、居心地の悪さに気が休まらない。素性のわからない見知らぬ男の人と寝室で二人きりって、状況的にはかなりヤバいのでは?でも薬研はこの人を知っていた。目が覚めたばかりの私を任せていくということは、かなりの信頼を寄せているのだろう。確か、大倶利伽羅と呼んでいたっけ。大倶利伽羅……どこかで聞いたような気がしなくもない。どこでだっけ?
「おお、くりから……?」
「……なんだ?」
「あ!いえ、なんでもないです……」
慌てて布団を頭まで被る。まずい、つい口から出ちゃった。大倶利伽羅さん、なんだかすごく機嫌悪いみたいだし薬研早く戻ってきてくれないかな……。
「……おい」
「え⁈はい、なんでしょう?」
「まだ具合が悪いのなら早く言え。俺がいると休めないのなら出ていく」
「あの、そういう訳じゃなくて、その……」
「待たせたな大将!……って、どうしたんだ⁈また具合悪くなったのか?」
「ああ、大丈夫だよ薬研。それよりお粥ありがとう」
良かった、薬研が来てくれて。頭まで被っていた布団をよけて身体を起こす。すると大倶利伽羅さんが枕元に置いてあった羽織を掛けてくれた。
「あの、ありがとうございます」
「いや、いい」
「たーいしょ、いくら言うこと聞かずに無茶したのが気まずいからってそんなによそよそしくっちゃ大倶利伽羅の旦那がかわいそうだろ?」
「え⁈薬研それってどういう……?」
薬研がよくわからないことを言っている。
「覚えてないのか?大将ってば大倶利伽羅の旦那がまだ休んでろって言うのに大丈夫だって仕事しようとしてぶっ倒れたんだぜ?」
「……覚えてない。っていうかそもそも私この人知らないし」
「……は?何言ってんだ大将?恋仲の相手を知らないとか冗談キツいぜ?」
「な⁈恋仲って、誰と誰が⁈」
「え?」
「え?」
「……そういうことか」
ちょっと待って、何が一体どうなってるの⁈