第2章 濡れた肩を寄せ合う雨宿り 【山姥切国広】
「食べないの?まんば」
「…あんたが食べればいい」
「私一人じゃ食べきれないから半分こしてるんじゃない」
「なら何故どれか一つにしておかない」
「だってまんばが何でもいいって言うから」
箸を置いて楊枝を取り、たこ焼きを一つパックの中からすくい上げた。
「ほらまんば、美味しいよ?ハイあーんして」
まんばの口元にずいっと押し付けるように差し出すと、更に困惑を深めたようでいつも被っている白布を目深に引き下げた。
「…からかうな」
「別に私が口を付けたものじゃないんだからいいでしょ?ほらあーんして」
暫しの間無言の応酬が続いたけど、まんばが何か言おうとして口を開いた隙を狙ってたこ焼きを押し込むことに成功する。
「な⁈あっつ!!!」
さすが焼きたて、まだアツアツだったようだ。あれ?まんばって猫舌だったっけ?
「ね、美味しいでしょ?」
まんばが黙って咀嚼している間に楊枝をたこ焼きのパックに戻して、再び割り箸を手にする。残りのお好み焼きを食べようとした途端、まんばが声をかけてきた。
「おい、口を開けろ」
「え?」
不意を突かれてたこ焼きを口の中に押し込められる。
「え⁈まっあつっっ!!!」
なんだか口の中がジンジンする。どうやら上顎を火傷したようだ。なんとか咀嚼して飲み込むと、まんばがしてやったりという顔をして言った。
「お返しだ。美味かったろ」
意地悪く笑うまんばをジト目でひと睨みして、残っていたお好み焼きを口の中へ放り込んだ。