第2章 濡れた肩を寄せ合う雨宿り 【山姥切国広】
本丸から転移ゲートをくぐって城下町へ出ると、既に沢山の審神者と刀剣男士がいた。中には粟田口兄弟を全員同伴させている審神者もいる。ウチも短刀達が来たがったけど、清光が気を利かせてくれたのだ。私がまんばに片想いしているのを知っているのは初期刀の清光だけ。良い機会だから告白しちゃえ、と二人きりで出かけられるように取り計らってくれた。なのにさっきから少しも会話が無い。まんばが話しかけてくることはないし、私から話しかけてもああ、とかうん、とかそんな返事だけで会話が終わってしまって続かない。いい加減話題も尽きて来た時に、山姥切を連れた他所の審神者とすれ違った。その審神者の連れている山姥切はいつもの戦装束ではなく審神者と揃いの浴衣を着ていたのだ。ついそちらに目を引かれて立ち止まると、気づいたまんばが話しかけてきた。
「ここで立ち止まると往来の邪魔になる。行くぞ」
「あ、うん、ちょっと待ってってばまんば!」
スタスタと先に行ってしまうまんばを慌てて追いかけると、まんばは少しだけ速度を緩めて追いつくのを待っていてくれた。
「そう言えばまんばはいつもの衣装だよね?清光が浴衣用意してくれてたけど着なかったの?」
「俺は護衛の為に来た。戦装束でなければあんたを守れない。それに写しの浴衣姿など見ても面白くもないだろう」
ふと思いついて訊ねてみれば、いつも通りのまんば節が返ってきた。
「そっか…私は見たかったけどなぁ、まんばの浴衣姿」
「………」
小さく呟いた言葉に、返事は返ってこなかった。