第1章 冷たい手【刀剣乱舞 大倶利伽羅】
それから3日の間、私は食べることも眠ることもせず泣き続けた。泣きながら自分を責め続けた。どうしてあの日、あの時代へ進軍を命じてしまったのか。検非違使が出ることは知っていたのに、どうして練度の低いメンバーを2人も入れてしまったのか。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
そんな思いばかりをぐるぐる廻らせていた4日目の朝、自室の襖を勢いよく開けて現れた歌仙に、いきなり横っ面を引っ叩かれた。
「いつまで君はそうしているつもりだい?彼が守りたかったのはそんな主ではなかったはずだ」
「だって、倶利伽羅は私のせいで……」
「今は人の身を得てはいるけれど、僕達は刀だ。戦に出れば折れることもある。形あるものはいつか壊れる、それが理だ」
わかってる。歌仙の言うことが正しいのは。けれど自分のせいで大切な恋人を失ってしまったのだ。哀しいし辛いし苦しいし、自分が許せない。
「それに僕達は分霊だ。折れても本霊に戻るだけで死ぬ訳じゃない。確かに君が愛した……君を愛した大倶利伽羅は折れてしまった。でもいつかまた分霊として君の前に現れる可能性が全く無い訳じゃない」
「また、逢えるかもしれないの……?」
「ああ、君が審神者を続けていればね。そのためには食事を摂って休むんだ。さあ、粥を作ってきたから朝食にしよう」
いつの間にか、歌仙の背後に前田がお粥と果物をのせたお盆を持って立っていた。労わるように微笑むと、お盆を差し出す。
「主君、どうかお召し上がりください。ほんの少しでも結構ですから、どうか御身をご自愛ください」
ああ、心配を掛けてしまったのだ。そう思うといたたまれない。おずおずと受けとって傍の小机に置いた。お粥はまだ温かい。少しだけお椀に取ってから口に含む。歌仙のお粥は少ししょっぱかった。