第1章 悲哀、師弟。
手を穢すのは、私だけでいい…。
「あなたには、まだ早いです」
「…でもっ、でも―――――…」
時間が経つ度に、人は増えていく。
ズキズキと痛む両足からは、血がドクドクと流れている。
両足を…半年前に縫って繋げただなんて嘘だ。
本当は、つい最近縫って、魔法で痛みを誤魔化していただけ。
それまでずっと、車椅子のような生活だった。
「…いいですか、ヤムライハ。私が時間を稼ぎます、その間にあなたは『シンドリア』という国の、王に会いに行きなさい」
「…シンドリア?」
「その人なら、きっとあなたを助けてくれる」
此処に来る前に、私はシンドリアの王、シンドバッドに会った。
今から奪われた者を、取り返しに、マグノシュタットを襲撃しに行くという旨を伝え。
そして、本題を切り出した。
『その数日後、捕らわれていた私の弟子が、きっとこの国に来るでしょう…』
どうか、その子を護って下さい。
繋いだばかりの両足から血が流れ、痛みに耐えながら彼の目をジッと見据えた。
杖で支えていた体が崩れて、無様に地に伏しても、彼に懇願し続けた。
シンドバッド王が止めても、私は血で染まった床に頭をつける。