第1章 悲哀、師弟。
次々と魔導士を殺していき、私はついに彼女を見つけ出した。
薄暗い、外の光が届かない牢屋のような部屋に彼女はいた。
部屋の隅で震えて泣いている、幼く愛しい弟子の名前を呼ぶ。
「ヤムライハ」
「―――――師匠…?」
「迎えに来ましたよ」
ぽろぽろ…と、彼女の頬に伝う涙。
私を目がけて駆け出し、抱きついた。
私の腰くらいしかない弟子の頭を撫で、しゃがみ、抱きしめる。
何度も願った、再会の時。
「師匠…師匠っ、うわあぁあん――――っ!!」
「遅くなってすみません。…なにしろ、『繋ぐ』のに時間がかかってしまって…」
ヤムライハを奪われたあの日、私はマグノシュタットの元老院たちを追いかけようとした。
けれど、焦っていたせいで冷静さを失い、奴らの仕掛けた足元の魔法陣に気づかず…。
一歩踏み入れた瞬間に、両足を吹き飛ばされた。
不器用な私が縫った、両足と太腿の縫い目を見て、彼女は悲鳴にも似た声を上げる。
「…足っ、…師匠、足がぁ…っ!!」
「大丈夫ですよ、もう縫ってから半年も経ってるんですから」
…背後に何人もの魔導師の魔力を感じても、私は余裕の笑みで、彼女の耳元で囁いた。
「…さぁ、帰りますよ」
「その女を殺せ…、ヤムライハを捕まえろッ!!」
「高度魔術式『ウェル・アシュト』」
すべての魔法を退ける、完全防備の魔法を使った。
後ろにいる魔導師たちを鋭く睨みつける、鬼のように。
そして、ヤムライハの肩を抱き、窓から後ろ向きに落ちる。
怖がって泣いている彼女に、「大丈夫よ」と言い、ふわっと着地した。
「2人を逃がすな」
「相手は『伝説』とも謳われた魔導師だぞ…」
「だが…所詮1人だ、何ができる」
ヤムライハが何か呪文を唱えているのに気づき、その口を、私は閉じさせた。
不安そうな眼差しで私を見上げ、ギュッと私の服を掴む。
彼女は人想いで優しい、そして、魔法を純粋に愛した子。
だからこそ、その手を汚すことはさせたくない。