第1章 悲哀、師弟。
「その女を殺すな…、捕らえろ」
「…………」
上を見上げると、最高地位の元老院が立っていた。
蔑むような目で私を見下ろしているけれど、怒りに身を任せ、突発的な行動なんてしない。
今から死ぬ彼が、哀れだと思うから…。
「待ってて下さいね。今行きますから…」
「ふん、何をぬかして――――」
私は術式を発せずに空間を移動し、目の前にいる…無限の魔法の追求に、思考を汚染された哀れな老人の首と胴体を真っ二つに切り裂いた。
誰もが息を飲んだ、そんな緊張感がすべてを包み込む。
「ね…、言ったでしょう? 『今』から行くって…」
耳障りな人々の悲鳴、怒声。
私はそれを一瞬でかき消すように、腹を抱えて笑う。
そして、笑うのをやめ、人々を見下ろし、杖を振るって言葉を呟いた。
「崇高術式『ウェル・アララージュ』」
人々の意識は途絶え、バタバタと倒れて深い眠りに落ちていく。
死んだわけではない。
けれど、もう二度と目覚めることはないだろう。