第1章 悲哀、師弟。
入国審査をしているのが見える。
私は深くフードを被り、列の横を歩いていった。
番人たちが前に立ちはだかり、私を静止する。
「お前、ちゃんと並びなさ――――」
「高度魔術方式『ウェル・リーザ』」
静かなそう言い放つ。
すると突然、番人たちを青黒い炎が包み込んだ。
それは、すべてを焼き尽くすまで消えない、魔の炎。
断末魔の叫びが響き渡り、すべての人間の注目を集める。
そっと顔を隠していたフードをめくった。
「私の弟子を…、返してもらいましょうか」
「サヤ・フローザ…っ!!」
ざわざわと騒々しくなる。
私の周りを何十人もの魔導師が取り囲み、緊張感に包まれていた。
しかし私には、ただ鬱陶しいとしか感じない。
両手を広げ、脇に杖を挟み、胸元で手を組んでしゃがむ。
「独創魔法術式『ウェル・ミテューア』」
特殊な魔力を術式に入れ込んだ、私独自の魔法だ。
私を囲んでいる魔導師たちは、急に顔を真っ青にして叫びだす。
遠くの者には、急に発狂しているように見えているだろう。
私はニヤっと笑って城の中へ入っていった。
「腕が…、腕がぁあぁあッ!!」
「どうしたんだっ!、腕ならちゃんとあるぞッ!!」
「ふふ…」
彼らには、自分の腕や足が、腐っていったり、骨になっていくように見えているのだ。
そしてその幻術は、数分後にリアルに現れてくる。
私の特殊能力は、
現実と幻を反転させることができる能力…。
「さぁ、ここからが始まりですよ」
ただ軽く杖を振るうだけで、周りは怯えていた。