第5章 予選*(本気宮)
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“55番。”
「ほら、行くよ。」
『うん…』
二宮さんはまだ不安でいっぱいの私のおでこに、
優しく唇を落とした。
『は?』
「んー、今日は俺、千春の彼氏ですし笑」
『それとこれとは、「ほら行くよ。」はい。』
私はおでこに風邪とは違う熱を感じながら。
彼にエスコートというか、
強引に引っ張られてランウェイを歩いた。
彼が出た途端に、ざわめいたから。
たぶんきっと。
彼の外見に惹かれたんだと思う。
私たちがランウェイの端まで歩くと。
彼は何も言わずに膝まずいて。
私の手に、また唇を落とした。
『な、な、なな』
人前でこんなことされてあたふためいてる私に。
にっこりと微笑んだ彼は。
なにもなかったように。
舞台裏へと私を強引に引っ張った。
*