第5章 気づいたココロ
【ルネSIDE】
「きゃー、不二くんだーっ!! やっぱりテニスしてる姿もかっこいいよーっ」
隣でルリちゃんががはしゃぐ。
私は昨日も彼の試合を見た。
彼に限らずここにいる人たちのテニスのレベルは中学生にしては高い方だと感じた。
・・・周助君は、独特なプレイスタイルだった。
独特というよりも、決めるときには決める、みたいな安定感があった。
今打っている相手は身のこなしがすごい軽やかに動く人だが、周助君は球を工夫しているのか彼が取れない球を送っていく。
周助君がリードしていた。
「あんな天才的なプレーをしているのに、手塚君が彼を上回るの?」
「手塚君はもう全国クラスだよ? いくら不二くんでも手塚君に勝つところは想像できないな~ちょっと残念だけど(泣)」
「全国・・・」
「しかも、去年は負けなしだし」
「日本一!?」
急にすごいワードがルリちゃんの口から飛び出し、私は驚きの声を上げる。
てことは、もし手塚君に勝ったら日本一なんだ・・・
「――手塚君って、すごいね・・・」
「不二くんだって負けてないし! だって天才って呼ばれてるプレイヤーなんだよ? 見てわかると思うけど、ことごとくボールを返してるでしょ?」
「ああ、それはすごいと感じてる」
そう。
周助君が天才でボールをほぼすべて返してしまう人ならば、それ以上の手塚君は一体何なのだ。
・・・もう少し試合を見てれば分かったかな?
「あっ、不二くんが勝った~☆ おめでとうー!」
ルリちゃんが言うように周助君が6-1で勝っていた。
二人は軽く握手をすると、一緒にコートからでてきた。
「――っ!」
彼が一瞬こちらを見た。
「あっ! ね、今不二くんと目が合ったよ! やった~」
「・・・うん」
私も目が合った気がした。
彼はどちらを見たのだろう。
・・・ふと、そう思った。
「あ~満足♪ 今日はもう帰る、ルネちゃん?」
「・・・あ、うん。そうだね」
ルリちゃんの言葉に私は頷いた。
私は、今はタオルで顔を拭いている周助君の事を横目で見ながらミツルちゃんの元に向かった。