第5章 気づいたココロ
【周助SIDE】
「手塚君ったら手塚君!!」
「不二くんだってば~」
「ん?」
自分の名前を言うのが聞こえた。
今は部活を準備を終えてコートに入るところだった。
声のした方を見ると、クラスメイトの女子が・・・
「――ルネさん・・・」
いつも挨拶してくれる松野さんが何故か僕の名前を叫んで言い争っているみたいだ。
もう一人の比嘉さんは――手塚の名前を連呼している。
ケンカのような雰囲気に見えたので、割って入ろうかなと思って近づくと――
「私は・・・手塚君かな?」
――ルネさんが言った。
「・・・・・・」
チクリと、胸が痛くなった気がした。
(手塚・・・?)
彼女が昨日、手塚を見に部活見学に来たということは彼女らの会話から知った。
・・・今日も、手塚を見に来たのか。
「あれ、不二じゃん。もしかして相手いないの?」
後ろから声が聞こえて振り返ると、そこには菊丸がいた。
「あ・・・まあね」
「じゃ、ちょうどいいや。相手になってよ。大石がさー、手塚とやってっから暇なんだよ」
「手塚と・・・」
じゃあ、ルネさんも二人の試合を見に行くのだろうか。
・・・なんだか胸が苦しい。
思わず持っていたテニスのグリップを強く握りしめる。
「・・・不二?」
「いいよ。ちょっと打とうか」
「やったね♪ 今日こそ不二に勝ってやるぜ」
菊丸は僕の前をスキップで進んでいく。
僕は彼の後に続いてコートに入る。
・・・が、何故か先ほどの彼女の会話が頭から離れなかった。
(なんで、手塚・・・?)
気が立ってしょうがなかった。