第5章 気づいたココロ
「きゃー手塚君だーっ!!」
ミツルちゃんの叫びが耳に響く。
ルリちゃんも耳を抑えて一緒に手塚君の練習試合を見ているが、やはり周助君の方がいいのか彼が試合をしている方向をちらちらと窺っている。
「試合はまだ始まったばかりだけど、もう不二くんの方行きたくなっちゃった」
「1人でいかないの?」
「1人は心細いじゃない!」
ルリちゃんは心なしか顔を赤くした。
1人だとどうにも緊張してしまうらしい。
「やっぱり手塚君人気だなぁ・・・」
――ふとミツルちゃんの呟きが聞こえた。
彼女の言う通り、手塚君が打っているコートの周りにはキャーキャー言う女子が多かった。
彼女たちもファンなのだろう。
「手塚君集中切らさないのかな?」
「もう慣れたんじゃないかな(笑)」
私の質問にルリちゃんが答えた。
それほど女子が暇だということにもなるが。
「ん~。ね、そろそろ不二くんの方もいかない?」
ルリちゃんがしびれを切らしたようにそう聞いてきた。
その質問にはミツルちゃんが答えた。
「あ、私がついて行こうか? 送ったら戻って来るけど・・・」
「でも・・・」
ミツルちゃんの言葉に、彼女は言葉を詰まらせる。
手塚君の試合見たいでしょ、と聞きたいのだろうか。
ミツルちゃんの目はルリちゃんの方を見つつも手塚君の試合を見ている。
私は困っている二人に声をかけた。
「私が一緒にしゅ・・・不二くんの試合の方に行くよ」
「え、いいの?」
ルリちゃんが顔を明るくして聞いた。
「うん。手塚君の試合が気にならないわけじゃないけど、ミツルちゃんほど好きってわけでもないから」
彼の事を考えると胸が苦しくなる。だけど、試合見るだけなら・・・
「ルネちゃんゴメンね・・・」
「そうじゃないよ。ありがとう、でしょ?」
「っ!・・・うん、ありがとう」
ミツルちゃんが微笑むのと同時にルリちゃんが私の腕を引っ張る。
「そうと決まったら早くいこ! 試合終わっちゃうよ」
「うん」
私は彼女について走り始めた。