第5章 気づいたココロ
二人に促されるまま、私はまたテニス部に見学に来てしまった。
「どっちを先に見る? やっぱり手塚君?」
「え~? 不二くんだよ~」
先ほどから二人の言い争いを聞いているのだが、一向に終わらない。
私はほとほと呆れ始めた。
「手塚君ったら手塚君!!」
「不二くんだってば~」
私は二人が気づかないうちにこの場所を離れてしまおうと考え、そろそろと歩き始めた時だった。
「「ルネちゃんは、どっちが先?」」
・・・・・・。
・・・こうなるのね。
「私は・・・手塚君かな?」
私は周助君の事を考えないようにそう言った。
本来の目的から遠のく選択をしているけど・・・ま、時間はまだあるしいいやと気楽な考え方をして。
「やっぱ手塚君!? じゃあ早くいこ!!」
「んも~手塚ファンが二人いる時点で私の勝ち目無いじゃない・・・」
ルリちゃんがぼやいた。
私は別に手塚君が気に入ったわけではなかったから、どちらでもよかったのだけれども・・・
ルリちゃんが喜べば今度はミツルちゃんががっかりすると思って諦めた。
「手塚君は今・・・あっちで副部長さんとやってるっぽいよ」
「大石君? 彼も性格は好きなのよね~」
「でもね・・・」
「卵なのよね・・・」
前を歩く二人から、こんな会話が聞こえた。