第3章 テニス部
試合を見て、唖然とした。
「なに、あの打ち方は・・・?」
私は周助君が相手のうつスマッシュをことごとく返していくのを見つめていた。
自分の体を見事に操り、華麗に球を打ち返すその姿は、本当に人間なのだろうか・・・
私は、フランスでも見たことのないその技に見とれていた。
・・・試合は、周助君が勝利した。
「いや~さすが不二先輩だよな!」
「桃ちゃん先輩のダンクスマッシュも中学レベルじゃないけれど、つばめ返しをされちゃったら・・・」
「打つ手なし!」
先ほどの1年生らしい子たちが隣で騒いでいる。
「ねえ、あなた達ってテニス部員なの?」
「・・・え?」
私が声をかけると、彼らは戸惑ったように言葉を詰まらせる。
(あ、外国人だからちょっと怖いのかも・・・)
私は思わず自分の失敗を悔いた。
「あ、あの~あなたは・・・?」
3人のうちの1人がおずおずと進み出てそう質問してきた。
「私は今日転入してきた3年の日向ルネ。テニス部に知り合いがいるから見に来ちゃった♪」
(((か、可愛い・・・)))
・・・と、3人が思ったことをルネは知らない。
「で、その知り合いって?」
「不二周助って人。彼ってテニス強いんだね。クラスの子からは、部活の中では実力ナンバー2だって」
「まあ、不二先輩は天才って言われてますから」
「どんなにすごい技も難なくこなしちゃうよね」
・・・周助君はすごい人らしい。
1年生たちの賞賛の言葉は彼に直接伝えようと思って刻んでおいた。
「でもさ、周助君って試合中も涼しい顔してたね」
私がそういうと、カッパ口の少年が答えた。
「不二先輩はいつもポーカーフェイスっすよ!」
ポーカーフェイス・・・確かに、ずっと微笑んでいたら変わらないんじゃないかとさえ思ってしまう。
しかし、他の二人がその言葉を紡ぐ。
「あの表情を崩すときといったら、何か悪いことをたくらむいたずらの表情だよね」
「そうそう。ちょっと怖いかもって思っちゃうよ」
「おい、お前ら!」
二人の発言にカッパ口の少年が怒ったように言った。