第3章 テニス部
「不二先輩の彼女に失礼だろ!」
「え? 彼女なの!?」
「彼女なんですか?」
・・・・・・・・・・
・・・失言してくれたのは、この二人じゃなくてカッパ口の少年、貴方だったようね・・・
「彼女じゃないわ。ただ、クラスメイトで彼のお姉さんと友達なの」
「不二先輩って彼女いたんすか?」
「めっちゃ美人よ」
「ルネさんより?」
「おい!」
「もちろん」
この子供らしい二人とちょっと大人ぶったカッパ口の少年との会話が面白くて少し含み笑いをする。
そんな時だった。
私の背後から聞き覚えのある声が飛んできた。
「おい、お前ら。片づけは済んだのか?」
「「「手塚先輩!!」」」
そこに立っていたのは、難しい顔を崩さない部長だった。
「済んでないなら片づけを終わらせた後グランド5周だ!」
「「「ひぃいいっ」」」
「あ、ちょっと・・・」
私が止めるのもままならず、3人は手塚君に怯えたように逃げるようにしていってしまった。
・・・脱兎のごとく。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
残された私と手塚君の間に沈黙が訪れる。
「・・・あの」
「は、はいっ!?」
すると、唐突に手塚君と目が合う。
「先ほど、竜崎先生が女子の見学者を探していました。それはあなたの事ですか?」
「あ、はい・・・」
(話し方も大人~・・・)
怖いぐらいのこわもてだった。
「呼んでいましたよ。迷子なら、俺が責任をもって連れていきますが・・・」
「あ、ホントですか?」
実をいうと、先ほどの3人についてきたはいいものの、どこを歩けば戻れるかわからなかったのだ。
「助かります」
「あちらです。着いてきてください」
私は手塚君に促されるまま、彼の後を歩いて行った。