第3章 テニス部
放課後。
私は人ごみの中をかき分けてグラウンドに来た。
もうここでは陸上部らしいものや、サッカー部らしいものが練習を始めていた。
(やっぱり運動部は真剣ね・・・)
フランスで見ていた部活とは比べちゃいけないと分かっていても、素人目からしてもわかるくらいやはり弱い。
でも、彼らの一生懸命練習する姿からは少しなにか感じるものがある。
「あんた。ここで何してんだい?」
「・・・え、私ですか?」
私がこんな遠くから見ていることを不思議に思ったのだろう。
先生らしい年配の女性はフンと鼻を鳴らして私に話しかける。
「ここいらにいるのはあんたくらいだろうねえ・・・見学するならもっとちゃんとした場所があるだろうが。何もこんなところでぼさっと突っ立てないでも・・・」
「あ、今日はテニス部を見に行く予定で。ここはちょっと通りがかっただけなんです」
「あ、そうかい。それならちょうどいい。あたしは男子テニス部の顧問の竜崎すみれだよ。女子テニス部はあっちだから案内してあげよう」
「あ・・・私、今日は男子の方を見ようと思ってて・・・」
私がそういうと、彼女は驚いたような顔をした。
「なんだい。入部希望者なわけじゃないのかい? それともマネージャー? 先に行っとくけれど、こちとら真面目にやってるからね、マネージャーやるとしたら相当な体力が必要だよ」
「そういうわけじゃ――あ、マネージャーってやってる人はいるんですか?」
私はふと、頭に浮かんだ疑問を投げかけた。
もし他にマネージャーがいるのであれば、仕事はそんな大変じゃないだろうし、楽に試合を観察するだけで済むだろうと思ったからだ。
しかし、期待はあっけなく崩れた。
「いないよ」
「・・・・・・」
言葉は出なかった。
「・・・じゃあ、今日は一応見学だけでも・・・」
「見学はいいのだけれども・・・はあ、まったく。見学者は毎日絶えないねえ・・・」
「え?」
「女子が多いのさ」
「ああ・・・はい」
お昼休憩のときの事を思い出し、私は納得した。