第8章 ❇︎3月 「ごめんね 好きだよ」【スタミュ 鳳】
彼の身に何かが起こったことはすぐに分かった。
相変わらずのマイペースっぷりではあったけど、その瞳にはどこか影があったから。
「君は変わらないね」
「そう?…鳳も、変わってないよ」
「そうかな?そうだと良いけど」
変わらない何かを求める鳳。
そんな彼を支えてあげたくて、何度も彼と会った。
何度も、私がここにいると伝えた。
そうでもしなければ、鳳はふらりとどこかへ行ってしまいそうで。
彼は、いつでも大空へ羽ばたける翼を持っているのだ。
「…俺と付き合ってくれないかな」
そんな折、突然の告白。
思いがけない、でも最高に嬉しい言葉に飛び上がりそうになった。
カクカクと頷く私をくすりと笑った彼は、その後1つの提案をする。
お互いを束縛しないこと。
自由を望む、マイペースな彼らしい約束。
それを言われた時の私は、特に何も考えずにそれを承諾した。
今までだって好きとはいえ彼に必要以上に干渉しなかったし、私もそんなに恋人とベタベタしたいわけじゃない。
ドライな関係と言われるかもしれないけど、そんな私達でも良いんじゃないかと思ったから。
そしてやっぱり私と鳳の関係は然程変化しなかった。
今までより会う頻度が少し上がって、手を繋いだり彼のスキンシップが積極的になったりしただけ。
それは私にとってはドキドキする回数が増えたことを意味するけど、それが嬉しくて。
少しずつ、私が彼と多くの時間を共有したいと思い始めてることには気付かなかった。