第9章 ❇︎3月 卒業したら終わりなんて言わせない【黒バス 青峰】
頬に手を添えられ、さらに深く口づけられる。
「…っ、…」
噛みつかれるようなキス。
獣のように荒々しい彼に翻弄され、漸く解放された時には突然キスされたことの驚きなんて無くなっていた。
「……?」
「いや何だよその反応。何か言うことあるだろ、普通」
「えっと…何?」
がくっと肩を落とす青峰は"お前そんなにバカだったか"と失礼な物言い。
そういえば仮の付き合いの提案をされたときも、私が彼の意図を読み取れずに彼を苛立たせたような気がする。
その事を青峰くんも思い出したのか、何か納得したような顔で姿勢を正すと、急に真剣な顔になった。
その頬がほんの少し赤い気がして、とくんと音がする。
瞳の奥に揺れる炎に、期待している自分に気付いた。
「…くそっ、上手く言えねぇけど、」
「…うん」
「あー…俺、お前のこと」
彼が意を決したように私を見る。
心臓の音が次第に早くなる。
「好きだ」
ストレートな言葉が、私の心を貫く。
鼓動の早さと顔の赤さは最高潮に達した。
「…だから、これで終わりになんかしねぇ…させねぇ」
その言葉に、こんなにも喜んでいる私がいる。
そうだよ、青峰くん。
「…おい、なんか言えって…おわっ?!」
私は、その言葉を言って欲しかったの。
喜びをどう表せばいいかわからなくて、心のままに青峰に飛びつく。
さすが運動部、何とか私を抱きとめた彼は意味がわからない状態でも私を抱き返してくれた。
「…?」
「好き、大好きだよ…大輝くん!!」
変化した呼び名とその言葉で彼は全てを悟ってくれた。
さっきより力がこもった腕に抱かれ、彼の温もりに包まれる。
「…じゃあ、これからは」
「うん。私の本当の恋人になってください」
耳元で彼が、小さく"よかった"と呟いた。
もしかしたら青峰は、最初からそのつもりで私の恋人役を申し出てくれたのかな、なんて思ったけど。
それを確認することはやめた。
そんな問いはもうどうでもいい。
これからは、彼が隣にいるのは当たり前なのだから。